ビル業界トピックス

傘のシェアリングサービス「アイカサ」9月中に渋谷で100カ所設置に向け本格始動

 傘のシェアリングサービス「アイカサ」を提供するNature Innovation Group(東京都渋谷区)は、今年6月に東急不動産ホールディングス(東京都渋谷区、以下東急不動産HD)との協業を開始。9月中に渋谷エリアに「アイカサ」スポット100カ所の設置を進めた。

 「アイカサ」は2018年にスタートした事業。急な雨に降られた際、駅やオフィスビル、商業施設などに設置されているアイカサスポットの傘をレンタルし、短時間だけの利用ができる仕組みだ。傘のレンタル料金は24時間140円。同時に2本借りられる月額280円のサブスクプランも用意している。傘は使い終わったら近くのスポットに返却するだけ。スマホひとつで貸し出しから返却までできる利便性が好評を得て、現在は12都道府県全1600拠点とスポットの設置も拡大。アプリのダウンロード数は延べ60万に上る。

 順調に業績を伸ばすアイカサ。渋谷エリアでのドミナント戦略を開始した経緯について、COOの勝連滉一氏は「アイカサのサービス拠点は、これまで主に山手線の西側エリアに偏っていました。安定して稼働率が高いのは新宿と渋谷。中でも渋谷は若者の滞留人口が多いことが特徴です。渋谷で複数の再開発を進行していた東急不動産HD様に出資のご提案をしたところ、『渋谷を盛り上げたい』という理念が当社と一致し、渋谷でのアイカサスポット設置を協業で行うに至りました」と話す。

オーナー負担は運用費のみ ビル差別化と社会貢献に

 設置を進めるのは、「渋谷フクラス」、「ハラカド」をはじめとする東急不動産HD所有の建物22カ所、ならびに渋谷駅半径600m以内の商業施設やオフィスビル。70カ所以上あると言われる渋谷エリアのコンビニよりもさらに多くの拠点を作ることで、傘の利用を促進し、使い捨て傘の削減を目指す。

 「アイカサ」で提供する傘はビニールではなく、耐久性のあるポリエステル製。メンテナンスをすれば5年間の使用ができる。課金制で気軽にポイ捨てできないユーザー心理から、回収率も99.5%と高い。近年は出資企業とのコラボ傘も展開し、企業のPRにも貢献する。今回は東急不動産オリジナルデザインの晴雨兼用傘を制作し、渋谷だけで計900本を導入予定だ。 

 傘のシェアリング事業はビルオーナーにとってもメリットが多い。ビルの高付加価値化やサステナブル化を実現できることから、入居希望のテナントへのアピールにもつながる。定期的なメンテナンスや傘の修理、傘立ての設置はすべてNature Innovation Groupが担当。月額運営料金4980円のオーナー負担はあるものの、48㎝×48㎝の傘立てスペースを提供すれば、オーナー側は運営の手間もかからない。

 現在は大手デベロッパーの大型ビルへの設置が大半。一方で、「延床面積3000㎡以上、駅から徒歩10分以内のビルであれば、設置の効果が期待できる」と勝連氏は指摘する。

 同社では2030年までに「使い捨て傘ゼロ」を掲げており、今後はその実現に向けて、1都3県の鉄道駅1100カ所に設置を進める構えだ。

 「既に600駅まで設置を完了しました。2030年の目標達成に向けて、新宿エリアでのドミナント戦略や地方都市への設置の強化も進めていきたい」(勝連氏)。

 スポット数の拡大により、雨の日や日差しが強い日も心置きなく街歩きを楽しめる人が増えるだろう。平均滞在時間が増えれば、街の中での経済効果も期待できる。まさに、「街」、「アイカサ」「ビルオーナー」、「利用者」の四方よしのサービスといえよう。

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