森記念財団 都市戦略研究所(東京都港区、以下森記念財団)は先月24日、「日本の都市特性評価(Japan Power Cities, JPC)」の2024年版を発表した。
同調査は森記念財団が2018年に始めた都市総合力調査の日本版。東京23区を含む政令指定都市、県庁所在地および人口17万人以上の都市の計159都市を対象に、「経済・ビジネス」、「研究・開発」、「文化・交流」、「生活・居住」、「環境」、「交通・アクセス」の6分野と87の指標をもとに都市の特性をスコア化して評価するものだ。
今回の調査では「経済・ビジネス」分野のビジネス環境指標グループにおける昨年の「フレキシブルワークプレイスの密度」から「フレキシブルワークスタイル実施率」、「生活・居住」分野の育児・教育指標グループにおける昨年の「保育ニーズの充実度」から「育児・教育関連給付金の多さ」など、時流に合わせて複数の指標を変更した。
東京23区を除く136都市の合計スコアを見ると、1位が大阪市、2位が名古屋市、3位の横浜市が上位。そして4位京都市、5位福岡市、6位神戸市、7位金沢市、8位つくば市、9位仙台市、10位広島市と続いた。
大阪市は「経済・ビジネス」と「交通・アクセス」で高い評価を得て、長年の弱みであった「生活・居住」の評価において改善が見られたことが功を奏している。
2位の名古屋市は前回の3位から1ランク上昇。外国人住民の受け入れ態勢や自治体の政策による子どもの医療費支援で高評価を得て、「生活・居住」分野で前回18位から1位へと大幅に順位を上げたことなどが要因と考えられる。
10位の広島市は今回の調査で初のトップ10入り。「環境」分野における水辺の充実度で高評価を得たほか、「文化・交流」分野ではすべての指標グループでスコアを伸ばし、「研究・開発」、「交通・アクセス」分野では安定した強みが見られた。
一方、東京23区版の合計スコアでは港区が調査開始以来初の首位に躍り出ている。「経済・ビジネス」分野の新指標であるフレキシブルワークスタイル実施率、および労働生産性で高スコアを獲得したことなどが要因と考えられる。また港区は新規事業用不動産の供給は昨年に引き続き23区で1位。昨年4月からの10カ月の床面積の合計において、合計スコア2位の千代田区が8319㎡、3位の中央区が2万4344㎡であるのに対し、港区は10倍以上の24万7149㎡であったことも、「経済・ビジネス」分野のスコア上昇につながった。
森記念財団の理事で明治大学 名誉教授の市川宏雄氏は「今年度の調査では、過去3年間のパンデミックから回復している一方、すべては戻っていない状況が伺えます。コロナでダメージを受けて下がった福岡・京都がまだ上がってきていない状況です。一方で、東京23区では港区は観光客の誘致活動が熱心だったことなど、経済に特化した取り組みも高評価につながったと考えられます」と分析する。