コロナ禍によって需要が激減した民泊。訪日観光客の受け入れが再開してから、再度注目が集まっている。
2013年頃から国内では民泊が始まり、19年には過渡期を迎えた。前年6月に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の影響や新規参入が増加したことで宿泊費等も値下がりし、運営事業者や物件オーナーにとっても旨みが少なくなった。2020年からはコロナの影響で、撤退する企業が相次いだ。潮目が変わったのは昨年から。緩やかに訪日観光客が増えてくると宿泊需要も増加し、再び民泊事業を検討する事業者やオーナーも増えてきた。現状空室を抱えるオーナーにとっては空き物件で収益を生み出すことができ、中には周辺の平均賃料相場よりも1・5~3・5倍のケースもある。
一方で清掃スタッフの不足やオペレーション等の問題がある。特に清掃スタッフの確保で苦戦している企業は多く、受付システム等での無人化も重要項目だ。これらの問題に対応できる企業が、無人ホテルや民泊の運営・プロデュースを行うMASSIVE SAPPORO(札幌市中央区)。同社はフロント無人型の民泊を展開しており、エントランスにタブレット端末を設置するだけ。利用者はタブレット端末を操作し記載することでチェックインとなり、続けて同端末からパスワードを取得できる。このパスワードが部屋の扉に設置されたスマートロックの解除用パスで、宿泊期間中しか機能しない。チェックイン・チェックアウトが履歴として残り、チェックアウト後は清掃スタッフへ通知。通知を受けたスタッフが後に部屋を掃除する仕組みだ。
代表取締役の川村健治氏は「設備や快適性等が確保された戸建て物件であると、最寄り駅からの距離や築年数の経過に関係なく、高稼働・高収入を実現できます。テナント経営や住居用の賃貸経営においてマーケットに弱い地域でも機能することから、年々注目度は高まっています。国外の訪日観光客に目を向けると、アジア各国では今後も経済成長性が見込める国が多いです。民泊の需要も見込めることから、当社への問い合わせも増えています」と語った。
同社の強みは物件の事業性判断。民泊開始を検討する物件のプロデュースやオペレーションも見据えて、事業性を計画し、オーナーへ提案する。事業性に合わない、初期投資額が大きくなることから断るケースもある。昨今は室内のインテリアや家具への投資コストも増しているため、単なる空き物件を民泊へ変更するだけでは失敗する可能性が高い。工事費や遵法性も踏まえつつ、また北海道の場合は民泊のできる用途地域も確認が重要。各自治体の条例によって営業ができる地域とできない地域が決められていることから、事前の確認も大事になる。
川村氏は「民泊のできる場所や高収入を生み出す物件に制約はありますが、再び地方や未活用物件に光を当てるビジネスが民泊と思われます。新規参入が増えて、再びレッドオーシャンとなる前に始める・動き出すことが大事でしょう。今後はこれまでの知見を生かして旅館の再生やフロント無人化のビジネスも広く展開していきたいと思います」と語った。