森ビル(東京都港区)は23日、オフィスビル市場動向調査の2024年度版を発表。今後5年の年平均供給量は過去平均を下回る一方、オフィスの「大規模化」、「都心部への集積」が加速する見込みだと分析した。
同調査は東京23区内で1986年以降竣工の延床面積1万㎡以上のオフィスビルを対象に実施。供給量の推移やエリア別供給量、空室率と吸収量の推移などについて明らかにしている。
調査によると、2024年~28年の5年間で、東京23区における大規模オフィスビルの年平均供給は約82万㎡。過去平均を下回る見込みで、今後の供給によるオフィスマーケットへの影響は限定的と想定されるとした。
一方で、延床面積10万㎡以上のオフィスビルの供給割合は2023年が80%、2025年が68%、2028年が95%。過去最高値が2020年の75%であることを踏まえると増加の傾向が強く、前年から引き続き「オフィスの大規模化」は加速する見込みとしている。
また、23区における大規模オフィスビルの2023年の供給量約125万㎡に対し、吸収量(既存物件を含めたオフィス稼働面積の増減量)は約120万㎡。吸収量が供給量を若干下回っているものの、大規模オフィスビルのストック量が2022年から約3%の増加に対し空室面積が約2%の増加にとどまったことから、2023年末の空室率は0・1ポイント低下の5・8%と、2019年以来4年ぶりの低下に転じた。
2024年3月時点での大規模オフィスビルの空室率は東京23区で5・2%、主要ビジネスエリアで5・3%と低下傾向。立地やビルグレード改善への底堅いニーズを背景に、引き続き空室率の改善が進むと想定される。
今回の調査結果について、営業本部オフィス事業部の長谷川雅氏は「店舗やカンファレンス施設、ホテル、文化施設などオフィス以外の機能も兼ね揃えたビルへのニーズの高まりを背景とした多様な都市機能を有する大規模開発の増加が、オフィスの大規模化の要因の一つに挙げられます。都心部で空室消化が進んだ一部の物件では賃料を引き上げる動きも見られ、今後は立地やビルグレード、利便性といった商品力に応じた二極化がより顕著になるのではないでしょうか」と分析する。