様々な品目の物価上昇が、市民生活に大きな影響を及ぼしている。中でも家庭・業務ともに影響が大きいのが電気料金の高騰である。化石燃料由来の発電への依存度が高い日本は、燃料輸入コストの影響などにより、直近では6月に大手電力各社が値上げに踏み切り、今月にも一部の大手電力会社が値上げを実施する予定だ。多くの電力を消費する業務用ビルでは、電気料金値上げもさることながら、人々の関心の高い脱炭素化やSDGsの観点からも消費電力の削減が大きな課題となっている。
みなとテックス(東京都中野区)では、工場・倉庫、業務用ビル、学校など、様々な施設の高圧受電省エネ・電気料金削減のコンサルティングを手掛けている。同社では、まず対象の建物の過去1年分の電気料金の情報などをもとに、消費エネルギーの見える化を行う省エネ診断を無料で実施している。代表取締役の清野恭弘氏は「省エネ診断をもとに、『設備改善』・『調達改善』・『運用改善』の中から、対象の建物が最も効率的に電気料金の削減や省エネを実現できる手法を検討し、提案いたします」と話す。
設備改善とは、照明器具や空調機器を高効率機に入れ替える手法で、例えば電球型の蛍光灯をLED照明に入れ替えるだけで、消費電力を約34%削減することができる。LED照明は長寿命であることも大きな特徴であることから、導入後のランニングコストの削減という点でもメリットが大きい。電力使用量の中で大きな割合を占める空調機器も同様であり、機器の更新を実施するだけで大幅な電力コストの削減につながる。
調達改善は、使用する電気の調達先を変更するというもので、新電力会社への契約切り替えが挙げられる。しかし、自社で送電網を持たない新電力会社のリスクを考慮し、昨今注目を集めているのが自家消費型太陽光発電の導入である。これは自社の保有する建物の屋根などに太陽光発電設備を設置し、自社で使用する電力を賄うというもの。設置スペースを確保しやすい工場・倉庫などでは自家消費型太陽光発電を導入するケースが増えている。清野社長は「国や各自治体は再生可能エネルギーの発電設備普及推進を目的に補助制度を設けています。特に東京都は支援が手厚く、イニシャルコストを抑えて導入することが可能です」と述べる。
運用改善は、デマンドコントローラーを導入して使用する電力量を監視し、場面に応じて制御するという手法。みなとテックスではパナソニック製のデマンドコントローラー「エネマージ」を提案しており、電力の消費が高まるタイミングで空調設備などの運転を自動で制御。電気の基本料金の抑制に効果を発揮する。
みなとテックスでは無料の省エネ診断の結果をもとに、上記の様々なアプローチから最適な電気料金削減プランを提案する。昨今では環境配慮への取り組みが企業価値を測る1つの指標ともなっている。様々なテナント企業が事務所を構えるオフィスビルでは、脱炭素に対する入居企業側のニーズが高いだけに、建物の省エネ化に積極的に取り組んでいきたいところだ。